兄弟が遺産分割協議書にサインをしてくれない

兄弟が遺産分割協議書にサインしてくれない場合に、事態をそのままにしたまま、相続手続きをしない方がいらっしゃいます。中には、10年以上経過し、相続人が相当する増加した後に、依頼される方もいらっしゃいます。

しかし、相続人の同意がなくとも、相続手続きを進めることは可能です。

具体的には、遺産分割審判を活用することで、相続人の同意なく、裁判所が遺産分割の方法を決定することができます。

調停前置主義

 遺産分割審判を最初から申立てることはできず、法律上、調停を前置しなければならないこととなっています。

 これを「調停前置主義」と呼びます(家事事件手続法第257条第1項)。
 遺産分割調停は、あくまで話し合いの場であり、調停成立には全ての相続人の同意が必要です。

家事事件手続法第257条第1項

第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。

遺産分割調停と遺産分割協議の違い

 遺産分割調停は、あくまで話し合いの手続きであるならば、協議と大きく変わらないと考えがちです。
 しかし、調停と協議には大きな違いがあります。

 遺産分割調停では、仮に不成立となった場合には裁判官の審判となります。そのため、他の相続人が態度を保留して、遺産分割の解決に協力しないという態度に出たとしても審判により何らかの解決を見ることになります。そのため、他の相続人は、半強制的に遺産分割協議に応じざるを得なくなるため、調停外の遺産分割協議とは状況が異なり、事態の進展が期待できます。

 また、遺産分割調停ならではの解決手段があります。裁判官によっては、相続人に対し、審判となった場合の暫定的心証を示すことで、解決を説得することもありますし、調停に代わる審判(家事事件手続法第284条)を利用してより直接的に解決に介入することもあります。

家事事件手続法第284条

1 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。ただし、第二百七十七条第一項に規定する事項についての家事調停の手続においては、この限りでない。
2 家事調停の手続が調停委員会で行われている場合において、調停に代わる審判をするときは、家庭裁判所は、その調停委員会を組織する家事調停委員の意見を聴かなければならない。
3 家庭裁判所は、調停に代わる審判において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。

遺産分割調停や審判には弁護士の依頼をお勧めします

遺産分割調停は、本人の出頭も可能です。

しかし、複雑な遺産をめぐる法律関係は弁護士であっても容易に把握できるものではなく、一般人が把握することは不可能に近いものです。また、最終的に審判ではどのように扱われるのかという裁判所側のルールの把握なしに遺産分割調停を進めたとしても、方向性を誤ることになりかねません。

遺産分割調停や審判には弁護士の依頼をお勧めします。